ススキノの天使

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その昔、ふとしたご紹介で、北海道新聞の「朝の食卓」というコーナー(ネットじゃなく、紙の方)に、コラムを書かせて貰う事になりました。20~30人くらいで月1本コラムを持ち回りで書く、という様なコーナーでした。地元では道新という愛称で親しまれているのですが、道内で圧倒的なシェアをもっており、全国的には中日新聞に次ぐ規模を誇っています。

しかし、当時の私は独立したてで、かなりのリアル赤貧生活を送っており「コラムを書く時間があるなら稼がねばガルルル」というような状態でした。案の定、数ヶ月経っても、1本も書けなかったのですが、さすがにこのままだと、推薦してくれた知人の顔をつぶしてしまい、どえりゃーやばいのでは・・・と思い、あわてて書き出した訳です。

ここに転載する「ススキノの天使」というのは、その一番最初に書いたコラムです。

原稿を担当者に渡した後、こんな小さなコーナー、誰が読んでるんだろう、と思ったら、掲載後にいろんな所から声を掛けられひっくりした記憶があります。みんな結構細かく読んでるんだなと。これじゃベタ記事でもばれてしまう。悪いことは出来ないものです。

後から担当部署から電話があり、かなり評判が良かったですよ、続きも宜しくお願いしますね、と言われました。それですっかり気を良くした私は、きちんとせっせこ書くようになった・・・訳もなく、月に1本のはずが、元々のずぼらな性格も災いしてしまい、結局年間で6本しか書きませんでした。しかも自分でもこれはちょっとな・・・という様なお粗末な出来ばかりです。当然ですが、翌年あっさりお払い箱になりました。

それで、この原稿は全て無くしてしまい、忘れ去られた過去として完全に封印されていたのですが、先日なんと偶然その原稿が出てきました。実は私も読むのは紙面に載った日以来なのですが、こ、これは恥ずかしい、そして情けない・・・・。

気に入らない点が多々あるので、校正して公開しようかとも思ったのですが、当時のダメさ加減が良く出ているので、NO修正でそのまま転載します。タイムスタンプは2001.02.22です。いや~、そんな昔だったのね・・・。月末になるとカネが無くて某クレジットカードでキャッシングしまくっていたのが懐かしいです。

と、すっかり前置きが長くなってしまいました。


■朝の食卓
ススキノの天使
2001.02.22 北海道新聞朝刊全道 32頁 二社 (全606字) 

 今からもう十年以上前の話だが、明日で北海道をしばらく離れる、という夜、友人たちに壮行会をしてもらった。夜中までさんざん飲んで、さて友人宅に戻ろう、としたその瞬間、血の気が引いた。財布が無い。財布の中には、飛行機のチケット、新しい生活のためのウン万円が入っていた。もちろん当時の私にはかなりの高額。新聞紙面にデカデカと一千億円とか一兆円とか並んでいても、ピンと来ないが、事は自分のウン万円である。一兆円どころの騒ぎではない。

あきらめの悪い私は、友人たちの「無駄だからやめておけ」という制止も聞かず、ススキノ交番に駆け込み、紛失届を出した。何しろ、思い入れとしては一兆円どころではないのだ。あっさりあきらめるわけにはいかない。

 翌日、友人の助けで、何とか飛行機に乗り、新生活をスタートさせたが、それから一カ月後のことである。なんとあの財布が見つかったのだ。しかもウン万円もそのままだ。世の中捨てたもんではない、としみじみ思った。

 と、ここまでがススキノの天使のお話。ところが「ススキノの悪魔」もいた。結局、一年以上北海道に帰らなかった私は(財布は郵送してもらった)、天使の正体をとうとう確認しなかったのである。当然、お礼もしていない…。

 十年以上も前の話だし、もはや記録も残ってはいないだろう。今もススキノ交番の前を歩くと、悪魔の胸がチクリと痛む。ごめんなさい。そして心からありがとう。(会社役員・札幌)

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