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出産と宗教活動とプログラマーと その2「訳あり物件」の訳は問わない

ということで、いろいろと仕事詰まっていましてすいません。やっと少し落ちついたので?その1からの続きです。

「なんでよりによってうちに来ました?」というのは、厳密に言うと、「貴方のような旧帝国大学大学院卒で東証一部上場企業に就職して順風満帆な人生なのになんでそこを退職して、しかもよりによってうちみたいな超弱小企業に転職したいというのですか?アホちゃいまんねんパーでんねんでっか?」という意味です。

吉田さんは、

「実は僕、宗教活動をしていまして、その関係で特定の日時が働けないんです。そういう条件なんですが、雇って貰えないでしょうか」

と言いました。

普段私はあまり驚かない方なのですが、さすがにこの申し出というかカミングアウトには驚いて、


「え?宗教活動?特定の日?どういうことだろう。差し支えの無い範囲でいいので話てくれますか?」

と聞いたところ、吉田さんは、自分がとある新興系の宗教団体に所属(って言うのかな?)していること、そこで信者の義務として毎週決まった曜日にミサ?があり、その日は絶対に残業が出来ないので、18時上がりさせて欲しいこと。週末は布教活動があるので同じく休日残業は出来ないことを、率直に話してくれました。

なるほど、そうか、そこで私はどうして吉田さんがうちに面接に来たのかを理解しました。

彼はUターンで帰りたいのは勿論ですが、宗教活動もきちんと専念出来る環境の仕事につきたかったので、待遇は問題ではなく、希望を聞いてくれそうな職場を探していたら、SOHOをやっていたうちを見つけたわけです。職住近接なら、宗教活動をしやすくなります。

しかも私もこの通り見たとおりのキャラですから(どんな?)、フランクに話が出来ると思ったようです。

言い方が悪いのですが、そう、吉田さんは「訳あり物件」な人だったのです。

確かにこの条件では、プログラマとしては転職活動はかなり不利です。当時は今からは想像もつきませんが、プログラマーが余っており、仕事を探しているプログラマーが多い時代でした。

その後結論から言うと、私はすぐに吉田さんの希望を受け入れ、社員として働いて貰うことにしました。

ただし、条件を三つだけ承諾して貰いました。

一つ目は社内と客先で布教活動を絶対にしないこと。

二つ目は何しろ小さい会社なので、特別扱いする理由を他のスタッフにある程度説明しないとならないので、そこは了承して欲しい事。

そして最後の三つ目は、特定の曜日に残業出来ない件について、吉田さんとの約束を私は全力で守る。ただし、どうしてもやむにやまれない事情で、例えばその日クライアントからの要望で東京に出張に行って貰わざるを得ない場合があるかも知れない。その時は承知して欲しいという事。

吉田さんは「分かりました。それでお願いします。事情も田中さんの姿勢も理解しました。ただ、曜日の件だけは、もし連続してしまうと、勤務自体を続ける事が出来なくなるので、くれぐれもよろしくお願いします」と言いました。そこは絶対に譲れない一線なんだなと、私はうなずきました。

その後結構な長期間にわたり、吉田さんには戦力として活躍して貰いました。

結果から言うと、私は彼が絶対に譲れないと言っていたミサ?の時間帯は、一度も出張や残業をさせませんでした。人間やれば出来るものですね。

細かい点で言うと、「普通の人」より配慮しなければならない点はいくつかありました。例えば案件の打ち上げで呑み会をやる時、ちょうどスタッフに誕生日の者がいて「じゃあ〇○君の誕生日祝いも一緒にやろうか」と何気にいったところ、後から吉田さんから「誕生日のお祝いするんですか?だとすると教義に反するので参加出来ません」と言われてびっくりし、あわてて言葉のアヤだから、と説得した事がありました。でも参加してもらえず、以後、会社の呑み会は参加する事はほとんどありませんでした。

というような細かいアジャストをしなければならない点は確かに「普通の人」よりはありましたが、俯瞰すると、本当にプログラマーとして良くやってくれたと今も感謝しています。

しばしばどうしても吉田さんに直接対応して貰わないとならない緊急事態などがありましたが、ミサが終わってから対応してくれました。これもSOHOだからこそやれたのだろうと思います。

私が「訳あり物件」の吉田さんを採用したのは、何も吉田さんを可哀想だと思った訳でも、きれい事で採用した訳でもありません。

単に条件付きであったとしても、その範囲で貢献してくれるのであれば、戦力となる人材が欲しかったからです。弊社のような小さな会社ではどんな人でも戦力になるのであれば来て貰えるのはありがたいです。条件があるのであれば、その条件の中でやってもらえばいいだけです。結果、見事に彼は期待に応えてくれました。

今後日本は益々高齢化、少子化していきます。

いろんな条件のある人を、今までは一律にはじいていた時代は終わり、そういう条件がある、という前提で、会社が生かしていけるようにしていかないと、会社事態が成長していけないと思います。

弊社ももしかして今後イスラム教徒シーア派の人を採用して、1日に3回、ないし5回拝礼する機会を認めないとならない事も出てくるかも知れません。それでも特に問題ありません。というか、そういう多様性への適応が企業にはマストで求められる時代なのだと思います。大変かも知れませんが、それ以上に会社に貢献してくれるのであれば、何の問題もありません。

アクシアの米村社長さんが書かれているブログを拝読させていただき、ふとそのことを思い出しました。


ちなみに吉田さんのその後ですが、かなりの長い間貢献してくれた後、弊社を退職していきました。辞めるときに「今後どうするの?」と聞いたら、「教団の専従職員として働く予定です」と言いました。本当にそうなのか、それとも実は別の会社で働いているのか、その後のことは私も分かりません。社員が辞めた後、ほとんの場合がそうであるように、私もそれ以来、一度も彼とは会う機会はありません(とかいいつ、私の場合は元社員から仕事発注してらったりとか意外と機会があるのですが。。)

吉田さんが雇われた事を良かったと思ってくれているかどうかは分かりません。ですが、私は彼が入社してくれたこと、そして長きに渡って貢献してくれた事に深く感謝しています。

ありがとね。

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