ほぼ実録-アメトークのプロデューサーから学ぶ、Webプロジェクトの教訓

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たくらむ技術 (新潮新書)-「ロンドンハーツ」「アメトーーク! 」(テレビ朝日系)など大人気番組のプロデューサー 加地 倫三著 Web屋の経営

「ところで重林さん、先日のプロジェクト、結局予定がどうなったか知りたいんだけど、予定表はどこにありますか?」

「あ、バックログのガントチャートに載せています」

「え?あ、そうですか、了解です」

12月の上旬、田中はWebディレクターの重林にとあるWebサイトのリニューアルプロジェクトの予定について尋ねた。プロジェクトのキックオフミーティングの際、必ず12月末までにリリースをして欲しいと何度も念押しをしていたプロジェクトだ。

そこから数ヶ月経ち、気が付くととうとうリリース月になったが田中には何の報告も上がっていなかった。「便りは無いのは良い便り」とは必ずしもいかないというのは田中も経験値的には分かっていたが、他の経営マターに忙殺されており、ついチェックが手薄になっていた。

重林はつい数ヶ月前に転職してきたWebディレクターだった。まあ、特に難しいプロジェクトでもないし、任せて大丈夫だろう・・・。これが後で大きな問題となる事を、田中はまだこの時知らなかった。

 

・・・予定表について、いつの間にフィックスしてバックログに乗っけてたんだろう?まぁチームメンバーで共有が取れているなら別に良いいんだけど。田中はバックログにすぐにログインし、ガントチャートを開いて見て愕然とした。

「リリースが二月になってる・・・!?」

田中はびっくりしてイスから転げ落ちそうになったが、今は昭和ではないので,勿論そんな事はしない。

Webアシスタントディレクターとしてついていた田口がこの日は出社日だったので、田中はすぐに声をかけた。

「田口さん、あの案件、予定の事なにか聞いてる?」。

社員でもパートナーさん(会社では外注の事をパートナーと読んでいる)でもパートさんでも、必ず「君」ではなく「さん」づけで呼ぶのが田中の流儀だ。

「いえ、特に何も。プロジェクトの初期で言われたように、今回は規模的にも大きくないので、基本は重林さんとプログラマーで完結ですよね。何か業務量があふれる様な事があれば、重林さんが僕に振る、というスキームの通りです。僕には何も連絡がないので問題ないのかと思っていましたけど、どうかしました?」

「なるほど、そうか、分かった。すぐにオンライン会議をしたい、重林さんを呼んでくれますか」

「え?あ、はい」

「例のWebサイトのリリースが二月に変更になっている」

「ええ?」

5分後、緊急の会議が開かれた。参加者は田中とWebディレクターの重林、Webアシスタントディレクターの田口、PGの梅木の4人だ。

「重林さん、予定表これ私初めて見たんですが、どうしていつの間にか勝手にリリース日が二ヶ月も延期になってるんですか?お客様は何と言っているのですか?」

重林はちょっと困ったような顔をして説明を始めた。「元々仕様が増えたという事もあるのですが、受注金額の中で対処出来る程度の誤差でした。ただ要件定義に時間がかかってしまったので、念のため予定をずらして対処することにしたんです。お客様にも理解して貰いました」。

「事情は分かりました。ただ予定の変更もお客様の理解は得られたと言っても、そもそも私は承認もしていません。しかも二ヶ月もずれてます。これ、梅木さんも知ってたんですか?」

梅木もちょっと驚いたようなニュアンスで話し始めた「いや、何の説明もないですし、私も実は今初めて知りました。二月になったんですか?どうりで随分ノンビリしてるなぁとは思っていたのですが、、、私も他のプロジェクトもあったで、気にはなっていましたが・・・」

重林がバツが悪そうに説明を始めた。「いやすいません、バックログのガントチャートを更新すると、各人にメールが飛びますよね?私はあれを普段全部目を通しているので、皆さんもてっきり目を通しているのかと思っていたのですが・・・」。

田中が答えた「重林さん、すいません、私はメールが大量に来るので、あれは基本的に見てないんです。また、他のスタッフも同様で、中には通知をオフっているスタッフもいます」

「そうだったんですね。すいません。お客さんにも納得して貰っていたので、その辺は確認が甘かったかも知れません」

「重林さん、社内でもたまに話をするのですが、「言った」という事と「伝えた」という事は全く意味が違います。今回の場合、バックログの通知メールで見ているだろう、という事だったと思うのですが、結果的には誰も見てませんでしたよね。事前に通知メールは必ず全部確認しよう、という仕切りがそもそも十分では無かったのが原因だと思いますが、そういうシステムがあるから、というだけではなく、予定の立案は担当者間できちんとすりあわせをした上で作るのは基本中の基本です。かつ作った予定に対して、ちゃんとみんなに理解して貰っているか、伝わっているか、というところまで確認するのがディレクターの仕事として大事な仕事だと思います。メールが飛ぶからとか、言ったから、というのはちょっと厳しい言い方ですが「免罪符」にはなりません。それではプロジェクトは回らないので今後留意してくれますか」

「すいません、プロジェクトの規模が小さめだった事もあり、油断してざっくりした進め方になってしまっていたかも知れません。今後気をつけます」重林は申し訳なさそうに返答した。その後再度担当者で改めて予定を引き直すこととなった。

田中はプロジェクトを完全に任せっきりにしていた事を少し公開していた。要所要所でチェックポイントを設ける事は基本中の基本だ。しかし多くの経営者はプレイングマネージャーのため、基本スタッフに任せなければ業務が回らないというジレンマがある。

田中は帰宅後、自分の書斎兼仕事場で、ふと一冊の本に目が留まった。

たくらむ技術 (新潮新書)-「ロンドンハーツ」「アメトーーク! 」(テレビ朝日系)など大人気番組のプロデューサー 加地 倫三著

そういえばこの本にも「言ったと伝えたは違う」と書いてたな。自分も言いっぱなしだったかも知れない。反省だな。パラパラとその本を手にしながら田中は苦笑した。

see also;
・「たくらむ技術」が今年最初の殿堂入り | Web屋の社長は考えた

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